コラム

家の設計やリノベーションを行う際に、「廊下の広さ」をどうするかは重要なポイントです。
廊下の幅は建物全体の使い勝手や快適さに直結するため、多くの人が悩む部分でもあります。
特に、住宅の廊下幅には法律で定められた基準があるのか、またどの程度の幅が理想なのかは知っておきたいところです。

この記事では、法律面での廊下幅の基準や、廊下幅を決定する際に考慮すべき実用性や快適性について詳しく解説します。
家族構成や家具の搬入、将来的な介護への配慮なども含め、最適な廊下幅について理解を深めましょう。

廊下の幅の基準とは?

1:建築基準法での制約は?

一般的な戸建て住宅においては、廊下の幅に関する法的な制限はほとんどありません。
ただし、3階建て以上の住宅や、採光基準を満たさない部屋がある場合には、避難経路としての廊下幅が求められます。
また、居室の合計床面積が200㎡を超える階には、建築基準法の施行令119条に基づき「避難経路の有効幅」が必要です。
このような特殊条件に該当しない場合は、廊下幅は比較的自由に設計できますが、快適な生活のために広さを確保することが望ましいです。

2:一般的な廊下幅の目安

戸建て住宅では、78cm前後が一般的な廊下幅です。
日本の住宅で多く採用される「尺モジュール(910mm)」に合わせると、この幅が標準となります。
78cmは人が一人通る際の最低限の幅とされ、柱や壁の厚みを考慮しても、日常的な動線として十分なスペースを確保できます。

3:廊下幅の快適性と実用性

廊下幅は、居住者の生活スタイルや家族構成に応じて決めることが大切です。
例えば、車椅子の通行やすれ違いを考慮するなら、90cm以上の幅が推奨されます。
特に、将来的にバリアフリー設計を考える場合は、廊下の広さを一考する必要があるでしょう。

快適な廊下幅を決めるポイント

1:家族の生活スタイルに合わせた広さの確保

家族構成やライフスタイルに応じて最適な廊下幅は異なります。
例えば、小さなお子様や高齢者がいる場合には、移動のしやすさを考慮して80~90cm以上の廊下幅があると安心です。
生活動線がスムーズになるだけでなく、万が一のときにサポートしやすく、子どもと大人が並んで歩く際も快適です。

また、ペットを飼っている場合、廊下を自由に行き来するためのスペースがあれば、飼い主とペット双方にとっての快適な空間を維持しやすくなります。
生活に合わせた廊下幅の設定は、日常をより便利で快適にしてくれるでしょう。

2:将来的なバリアフリーへの配慮

年齢を重ねるごとに、身体の負担が少ない設計が求められます。
バリアフリーを意識した廊下幅は、最低でも90cm以上が目安です。
手すりの設置を検討する場合は、さらに10cm程度余裕があると良いでしょう。
また、将来的に車椅子の利用を考えるなら、廊下幅を1m以上確保しておくと安心です。
高齢者の方や身体に不自由のある方がいる家庭では、このような設計が移動をより安全でスムーズにします。

3:家具や荷物の搬入を考えた幅設定

大きな家具や家電を搬入する際、90cm程度の廊下幅があるとスムーズです。
通常は78cm幅の廊下でも問題なく搬入できますが、特に奥行きがある家具や家電、ピアノなどを設置予定の場合、廊下幅に余裕を持たせることでスムーズな作業が可能です。
また、住まいのレイアウトによっては、廊下を広くとることで、空間を無駄なく使えるデザインを実現できます。

廊下幅を広げるメリットと注意点

1:多目的スペースとしての活用

廊下幅を通常よりも広く取ると、単なる通路としてだけでなく、さまざまな用途での活用が可能です。
例えば、廊下の一部に本棚や小さな収納スペースを設置すれば、デッドスペースの有効活用になります。
壁面にインテリアとして飾り棚や絵を設置することで、家全体に統一感を持たせつつ、趣味の空間としても楽しめるでしょう。
広い廊下は生活動線を圧迫せず、見た目にも開放感が出るため、住まい全体の印象を明るくしてくれます。

2:収納スペース設置のポイント

廊下に収納を設ける場合は、幅に余裕があることが前提ですが、設置する収納の奥行きにも配慮する必要があります。
例えば、奥行きが15cm程度の本棚であれば、必要最低限の廊下幅60cmを保てますが、すれ違いや動線にゆとりを持たせるなら廊下幅は80~90cmが理想です。
また、収納の扉の開閉による通行の邪魔にならないように、引き戸や折り戸の使用も検討すると良いでしょう。
事前に何を収納するか、収納のサイズを確認して設計することで、実用性と快適性を両立させた廊下が実現します。

3:廊下を広く設計する際の注意点

廊下を広くすることには多くのメリットがありますが、その分、居住空間が狭くなる場合もあるため、設計段階でバランスを見極めることが重要です。
特に都市部の狭小住宅では、廊下を広くすることでリビングや寝室などの広さが犠牲になる可能性があるため、用途や居住者のライフスタイルに合わせて最適な幅を選択する必要があります。
また、広すぎる廊下は冬場に寒くなりやすいため、断熱対策も考慮しておくと快適な空間作りに役立ちます。

廊下幅を決める際の設計ポイントと調整方法

1:地域の条例や自治体の基準を確認する

廊下幅の基準は基本的に自由ですが、一部の地域や自治体では独自の基準や条例が設定されている場合があります。
例えば、高齢者向けや車椅子対応が義務付けられている公共施設や、大型の集合住宅では、廊下幅1.2m以上と定められることがあるため、設計前に該当するかどうかの確認が必要です。
また、建物の規模や用途によっても基準が異なることがあるため、自治体の担当窓口での確認が安心です。

2:家族の意見を取り入れた最適な幅の設定

廊下の幅は、日常的に使用する家族全員が満足する広さにすることが重要です。
特に家族が多い場合や、介助が必要な家族がいる場合は、すれ違いやすい幅を確保したいところです。
生活導線としての機能性と広さのバランスを考えるために、家族の意見を反映させて廊下幅を検討すると、生活に寄り添った設計が実現しやすくなります。
たとえば、頻繁に家具を動かす習慣がある家庭なら、大きめの廊下幅で柔軟に対応できるようにしておくと便利です。

3:シミュレーションによる幅の確認と調整

設計段階で、廊下幅の使い勝手を実際にシミュレーションしてみることもおすすめです。
模型や3Dシミュレーションを使い、家具の搬入や家族の移動を想定したときのイメージをつかむと、実際の生活での利便性を具体的に把握できます。
また、広さが限られる場合は、壁面に鏡を設置して視覚的に空間を広く見せる工夫も有効です。
シミュレーションの結果に基づいて、必要に応じて他の部屋との広さを調整しながら、無駄のない設計を心がけましょう。

まとめ

廊下幅の設計は、住まいの快適さや利便性に大きく影響を与える重要な要素です。
廊下の幅には法的な基準はほとんどないものの、避難経路としての役割や、大型家具の搬入、家族のすれ違いを考えると、幅を適切に設定することが求められます。
特にバリアフリーを考慮する場合や多目的スペースとして廊下を利用したい場合には、90cm以上の幅が推奨されます。

また、廊下幅を広くすることで収納スペースや装飾棚を設けるなど、家全体をおしゃれに演出することも可能です。
設計段階では、家族の生活スタイルや将来的なライフステージの変化を見据えて、廊下幅を調整することが理想的です。
限られたスペースでも、デザインや収納の工夫でより快適な空間づくりができます。

最適な廊下幅の選択には、法律や実用性だけでなく、居住者の意見や将来の利用を視野に入れてバランスよく設計することが大切です。
廊下がただの通路以上の価値を持つ空間になるよう、今回の内容を参考にして、最適な廊下幅を検討してみてください。

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